野鉄との出会い、別れ、そして再び・・・

野上電鉄と出会ったのは平成五年の春、大学二回生になったばかりの頃だった。

当時私は、大阪に居を置きながら写真の勉強をしていた。 友人と和歌山方面にドライブに行った時、たまたま知ったその郷愁溢れる野上電鉄に、目が釘付けになった。以来時間が許す限り野上電鉄を訪れ、撮影を重ねた。もちろんその当時、野上電鉄があとわずか一年足らずで消えようとは、夢にも思わずに・・・

野上電鉄撮影を重ねるごとに、野上町界隈に訪れる頻度が増えていった。刻々と変化する気候、鉄道を取り巻く自然。今まで気にもしていなかった風景の移り変わりが、面白いように見てとれ、とても居心地が良かった。確かにその個性溢れる古びた電車たちを愛したのは間違いない。しかしそれと同じくらい、電車を取り巻く駅や田畑、利用する人々、時の流れによる景色の移り変わりに惹かれた。当時の住居から往復五時間掛かったが、多いときは週に二〜三回野上を訪れた。早朝から深夜まで自分のフレーミングを探し、歩き続けてカメラを向けた。そして一年後、あまりにあっけなく野上電鉄は廃止、地上から姿を消してしまった。

あれからもうすぐ十三年。今や野上電鉄の軌道は痕跡すら消えつつあり、もはや風前の灯だ。
しかし取り巻く環境はそれほど大きく変わっていない。
線路のあった所に佇み、ぼんやりとしていると、まぶたの裏にモーターを唸らせ走ってくる電車が浮かんでくる。
そんなイメージをまとめ、本にしたいと取り組んだ。
写真をセレクトし、ポジをルーペで覗くと、当時の記憶が昨日の事のように鮮やかに甦る。
その懐かしさに涙が溢れた。

内容抜粋

自分の青春時代の象徴、といっても過言ではない野上電鉄の写真。
十三年の時を越えて、今また公開する機会に恵まれた。
想いをなるべくそのままに伝えたいと、極力一人で編集・レイアウトまでして、 資料集としても活用できるよう留意した。

徹底的にこだわった野上電鉄の写真集、ぜひ手に取って見て欲しい。

 

野鉄について詳しく知りたい方はWikipedia-野上電気鉄道をご参照下さい。

 著者:松村 康史(撮影含む)
 発行:タクシー日本新聞社
 仕様:A4判 96ページ(カラー80p+モノクロ16p)
 ISBN:ISBN4-9903385-0-2 C0072 \3000E

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